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AI検索の流入が増えないのは失敗ではありません【見るのは他社ではなく自社の推移】
広報担当者
『AI検索の対策を1年近く続けてきました。でもアクセス解析を見てもAI経由の流入はほぼゼロで、社内では「効果が出ていないからやめよう」という話が出ています…』
こういった疑問に答えます。
本記事では、AI検索やAIO対策を続けてきた広報・マーケティングのご担当者と経営者に向けて書いています。AI経由の流入がほとんど増えないまま、続けるか止めるかを決めろと言われている方です。AIO対策というのは、情報の整え方のことです。ChatGPTのような生成AIに、自社が何の会社で何に詳しいのかを正しく分かってもらう。そのための準備です。
先に結論を3つ出します。
- 「AIにたくさん読まれているのに人が来ない」。この比率は、AIO対策の成績表ではありません。何点なら合格という決まりが公表されていないので、良いとも悪いとも言えません
- しかも、この比率は最初の状態では画面に出てきません。アクセス解析のタグを貼るだけでは、AIのクローラー(ページを読みに回るプログラム)が来た回数を数えられないからです
- そして「読まれた」は「使われた」ではありません。ここはMicrosoft自身が書いています。だから他社と比べるのをやめます。自社の先月と今月を並べて、どのAIに読まれたのかの内訳を見ます
この記事の要点
- 読まれた数と来た数の比率に、合格の決まりはない
- タグを貼るだけでは、AIのクローラーは数えられない
- 「読まれた」は「AIの回答に使われた」ではない
結論:AI経由の流入が少ないのは失敗ではありません。合格点そのものがありません
まず、いま社内で揉めている数字に名前を付けます。AIのクローラーが自社サイトを読みに来た回数と、そのAIから人が来た回数。この2つを1枚に並べた数字です。
この2つを並べたカードが、Microsoft Clarity というアクセス解析ツールにあります。名前は AI Scrape-to-Referral Ratio です。開く順番はこうです。Clarityにログインする。左のメニューの AI Visibility を押す。その下の Bot Activity を開く。スクレイプというのは、クローラーがページを取りに来ることです。リファラルというのは、そのAIから自社サイトへ送られてきた訪問です。
読み方は単純です。何千回も読まれているのに、戻ってきた訪問は数件。そういう形の数字が出ます。この差を見た人は、ほぼ全員が同じ結論に飛びます。AIは取るばかりで返さない。だからAIO対策は無駄だった、と。
ここから先が本題です。この比率には、良いか悪いかを決める基準がありません。Microsoftは「良い比率」がいくつなのかを公表していません。つまり、自社の数字が出ても、合格か不合格かは決められません。決めるための材料が、どこにも用意されていないからです。
比べる相手もいません。後半で実際の数字を並べます。同じ「スクレイプ対リファラル」という名前なのに、数えている対象がまったく違う数字が世の中に出回っています。数える範囲も期間も違う数字を横に並べても、順位は付けられません。
そして、いちばん効くのがここです。AIのクローラーが読みに来ても、その中身がAIの回答に使われたとは限りません。Microsoft自身がそう書いています。読まれた回数は、引用された回数でもありません。良い内容だと判断された回数でもありません。
だからこの記事の立場はこうです。他社と比べるのをやめる。自社の先月と今月を並べて、どのAIに読まれたのかの内訳を見る。流入が多いか少ないかでAIO対策の成否を決めるのは、成績表ではないものを成績表として読んでいる状態です。
この数字は、中身の説明が抜けたまま独り歩きしやすい形をしています。そこに先に釘を刺すのが、今日の記事の役目です。
まず数字の正体から。6,000:1 は平均でも基準でもなく、説明用の例の数字です
この話題で必ず出てくる数字があります。6,000:1 です。6,000回読みに来られて、戻ってきた訪問は1回。この数字が「AIは取るばかりで返さない」の象徴として独り歩きしています。
出どころを書きます。Microsoftがこのカードを紹介したとき、説明用の画面の見本を一緒に出しました。6,000:1 は、その見本の画面に写っていた数字です。文章の中で基準として示されたものではありません。世の中のサイトを全部集めた平均としても、業界の目安としても公表されていません。
紛らわしいのはここです。見本の画面の項目名には average と書かれています。だから、この画面を見た人は「平均と書いてあるじゃないか」と言います。けれどもMicrosoftは、たくさんのサイトをまとめた平均としては示していません。その average が何を集めた平均なのかも、画面の外では説明されていません。何を集めたのか分からない平均は、自社の基準にはできません。
もう1つ、割り算そのものの問題があります。6,000:1 の元になった訪問の件数は、ごく少ない数です。海外の検索業界のメディアが、画面から読み取った数字です。そのメディア自身が「こう書いてあるように見える」と注意書きを付けています。元の件数が少ないので、訪問が1回増えるか減るかで比率は大きく動きます。6,000 はきりのいい大きな数に見えて、実はとても軽い根拠の上に立っています。
では、会社ではどう扱うか。この数字を社内の資料に書かないでください。書くと必ず「うちは6,000:1より良いのか悪いのか」という話になります。基準ではないものを基準にすると、そのあとの話し合いが全部ずれます。
社内の誰かが持ち込んできたときの返し方も決めておきます。言うことは1つです。「それはMicrosoftが説明用に出した画面に写っていた数字で、基準として公表されたものではありません」。出どころを1行で言えるかどうかで、会議の時間が変わります。
Microsoftは「良い比率」を決めていません。目標がない数字を会議に出すと、何が起きるか
目標がない数字を会議に出すと何が起きるか、先に書きます。2段階で進みます。
1段階目は、なんとなくの判定です。数字を見た人は、必ず良いか悪いかを決めようとします。基準が示されていないので、決める手がかりは感覚だけになります。「6,000回も読まれて1人しか来ないのか」と言われたら、担当者は言い返せません。悪くないと示せる材料も、手元にないからです。
2段階目は、目標を自分で作ってしまうことです。「来期は3,000:1を目指します」のような行が資料に入ります。これがいちばん危ない。3,000 という数字に根拠はありません。しかも、読まれる回数のほうは、ふだんの運用では自社の努力で動かせません。AIのクローラーが何回来るかは、サイト側が決めていないからです。
読まれる回数を下げる努力を始めると、もっとおかしなことになります。読まれる回数が減れば比率は良くなります。つまり、理屈の上ではクローラーを追い返すのがいちばん速い改善策になります。目標が数字を壊してしまう、よくある形です。
そして半年後に何が起きるか。達成も未達成も自社の行動と関係のない目標なので、「やってもやらなくても同じ」という結論が出ます。実際には、やったことの効果が測れていないだけです。それでも会議では、測れていないことと効いていないことが同じ扱いになります。
だから、会議に出すときの形を変えます。比率を1つの数字にして出さない。基準がない数字を成績のように1つだけ出すと、読んだ人が勝手に基準を作ります。代わりに何を出すかは、後半で3つ書きます。
そもそも、この比率は最初の状態では出てきません。タグを貼るだけでは足りません
ここは技術の話になりますが、押さえるのは結論だけで十分です。
まず、GA4のようなタグ型のアクセス解析の仕組みから書きます。サイトの各ページに、JavaScript という小さなプログラムを貼り付けておきます。人がページを開くと、ブラウザがそのプログラムを動かして、訪問が1件記録されます。数を数えているのは、この動きです。
AIのクローラーは、このプログラムを動かしません。ページのHTML、つまり文字のデータを取りに来るだけで、解析用のプログラムは走らせないからです。つまり、タグ型のアクセス解析に、AIのクローラーの訪問はまず出てきません。社内で「アクセス解析を見てもAIからの流入がゼロだ」と言われているなら、注意してください。その画面に最初から映らないものを探している、ということかもしれません。
では、このカードはどこからデータを取っているのか。サーバー側の記録です。サイトが「このページをください」と頼まれた回数を、そのまま残した記録です。人が開いたのか、自動で動くプログラムが来たのかに関係なく、来たものが全部残ります。
ここが決定的です。このカードは、2種類のデータを突き合わせて作られています。読まれた回数はサーバーの記録、戻ってきた訪問はClarityのタグ。片方だけでは出てきません。だから「Clarityのタグを貼ればこの比率が見られる」は誤りです。
記録を送る道は、対応しているCDNとつなぐ形です。CDNというのは、サイトの配信を世界中の拠点から肩代わりしてくれる仕組みです。対応しているものとして Fastly、Amazon CloudFront、Cloudflare などが挙げられています。ただし、全部の一覧は時期によって変わります。Clarityの Project Settings から AI Visibility を開いてください。そこに出ているものを正とします。自社のCDNが使えるかどうかも、つながっているかどうかも、この画面で分かります。
費用も先に書きます。Clarity自体は、この機能にお金を取っていません。ただし、CDN側で記録を取り出したり送ったりする分の費用は、利用者がCDNの会社へ払います。つまり、無料の機能ですが、まるごと無料ではありません。社内で「無料なので入れましょう」と通したあとにCDNの請求が増えると、話がこじれます。先に分けて説明してください。
WordPressなら話は別です。公式プラグインを最新にすれば、最初から有効です
CDNの契約から始める話になると、中小企業ではほぼ止まります。ところが、ここに例外があります。
Microsoftの説明書きには、WordPressのサイトのことが書かれています。最新版のClarity公式プラグインを使っていれば、このつながりは最初から有効になる、と説明されています。CDNとつなぐ設定を別に組まなくても、サーバー側のデータがClarityへ送られます。日本の中小企業のサイトはWordPressが多いので、ここが現実的な入口になります。
条件は1つです。プラグインが古いままだと、この機能は使えません。更新が必要だと案内されています。だから、WordPressで運用している会社が今日やることは1つです。プラグインの管理画面を開いて、版を確認してください。入れた覚えがあるかどうかではなく、最新かどうかを見ます。
WordPress以外の作りでは、CDNとつなぐ設定が必要です。自社のサーバーで動かしているサイト。WordPress以外の仕組みで作ったサイト。制作会社の独自の仕組みに乗っているサイトです。この場合は、質問を1つするところから始めてください。「対応しているCDNを使っていますか」を、インフラの担当者か制作会社に聞きます。聞く相手がWeb担当ではないので、ここで止まる会社が多いところです。
ついでに、社内での置き場所も決めておきます。CDNとつなぐ作業は、AIO対策の打ち手ではありません。測るための土台を作る作業です。だから打ち手の予算ではなく、測る作業の手間として置いてください。打ち手の成果で評価される枠に入れると、つながる前に打ち切られます。
カードが空でも「読まれていない」証明にはなりません
ここで事故が起きます。カードを開いて、何も表示されない。そこで「AIには読まれていないんだ」と結論する形です。
違います。カードが空っぽなのは、つなぐ設定ができていないからかもしれません。前の節のとおり、読まれた回数のデータはサーバーの記録から来ます。その道がつながっていなければ、実際に何千回読まれていても、カードには何も出ません。
読み方を決めてしまってください。空っぽは「AIに読まれていない」の証明ではありません。「この画面でまだ数えられていない」という状態です。この2つを分けないまま、つなぐ設定もしないままAIO対策を止める。これがいちばんもったいない形です。
数字は出ているのに、様子がおかしいときの注意も1つあります。ボット側のデータと訪問側のデータが、別のドメインを見ている場合です。このとき、Clarityは比率に影響が出ると注意を表示します。比率の計算に入るのは、正しく組み合わさったドメインの分だけです。
これが効くのは、ドメインを複数持っている会社です。会社のサイトとブログでドメインが分かれている。サービスごとにサブドメインを分けている。こういう形ですね。どの範囲の数字なのかを先に確かめてください。でないと、片方のドメインだけの数字を、会社全体の数字として報告することになります。
ここがいちばん大事です。「読まれた」は「使われた」ではありません
ここから先は、つなぐ設定が済んで数字が出ている会社の話です。そして、この記事でいちばん持ち帰ってほしいところです。
このカードのデータが示しているのは、1つだけです。「ページをください」と頼まれた、という事実です。その中身が取り込まれたのか。AIの回答の根拠に使われたのか。引用されたのか。どれも分かりません。ここはMicrosoft自身が書いています。
つまり、読まれた回数は、AIが自社の情報を「使った」回数ではありません。だから、読まれているのに回答に出てこないことがあります。逆に、あまり読まれていないのに回答に出てくることもあります。この2つは別の話です。片方からもう片方を言い当てることはできません。
ここが仕事に直接効きます。社内でよく出るのは、こういう説明です。「クローラーがこれだけ来ているのだから、AIには分かってもらえているはずだ」。これは根拠になっていません。来たのは「ページをください」という依頼で、分かってもらえた証拠ではありません。逆向きの「読まれているのに人が来ないから効果がない」も、2つ間違えています。1つ目は、読まれた回数を成果として数えていること。2つ目は、人が来た回数を唯一の成果として数えていることです。
では、クローラーの回数は何に使えるのか。使い道は1つだけにしてください。ちゃんと届いているかどうかの確認です。回数がゼロに近ければ、読みに来るのを断る設定や、まちがってふさいでいる設定を疑えます。断る設定とCDN・WAFの点検は、見る順番つきでAI検索に自社が出ない原因【まず検索の生成AIを確認する】に書きました。届いているかの確認であって、成果の測定ではありません。
AIの回答に自社が出たかどうかは、別の画面で見ます。測る場所の全体像はAI検索の効果測定は何を見る?【動画が引用された先を追いかける】にまとめました。今日の話は、読まれた側の数字をどう扱うかです。引用された側の画面は、記事の終わりの表から辿ってください。
読まれた回数も、戻ってきた訪問もズレています。どちらも数字を実際より悪く見せます
比率の両側を1つずつ見ます。読まれた回数の側と、戻ってきた訪問の側です。どちらも、実際からずれる向きが決まっています。
まず、戻ってきた訪問の側です。AIのチャットの中で人がリンクを押したとき、どこから来たかを示す Referer という情報が消えることがよくあります。消えると、アクセス解析はその訪問を「直接アクセス」に入れます。つまり、AI経由の流入は、どの解析ツールでも実際より少なく数えられます。Clarityのカードも、この影響を受けます。
つまり、比率の片側は小さめに出ます。その結果、比率そのものは実際より悪く見えます。社内で「AI経由はたった数件です」と報告した数字は、ほぼ確実に少なすぎます。どれだけ少ないのかは分かりません。そこを埋められる信頼できる推計を、僕たちは見つけられていません。
次に、読まれた回数の側です。AIのクローラーが回ってくる目的は、1つではありません。学習や取り込みのための巡回が多くを占めます。検索の回答に使うための巡回は、その一部にとどまります。しかも、その割合は月ごとに動いています。だからこの記事では、割合の数字を書きません。出どころごとに食い違う数字を書くと、それが基準になってしまいます。
ここが仕組みの話です。学習のための巡回は、人を送り返すために動いていません。回答の中にリンクを出して人を送り返す動きとは、目的が別です。そもそも人を送り返す仕組みを持っていない、と見たほうが実際に近いはずです。だとすると、こうなります。送り返す仕組みのない依頼まで読まれた回数に入れたまま、「人が来ない」と言っていることになります。つまり、仕組みの上で最初からゼロのものを、失敗として数えている形です。
会社側の読み方を1つに決めます。この比率が悪いことは、AIO対策の失敗を意味しません。悪くなる原因が、自社の打ち手の外側に2つあります。Referer が消えることと、学習目的の巡回が多いことです。どちらも、ふだんの運用で自社が何をしても変わりません。そのうえ、学習目的の巡回が占める割合そのものが、月ごとに動きます。つまり、自社が先月とまったく同じことをしていても、比率だけが勝手に上下します。
そのうえで、自社に跳ね返ってくる部分も書きます。外側の2つは、きれいに引き算できる数字では出てきません。できるのは1つだけです。比率が動いたとき、「外側の2つで説明がつくか」を先に当てる。そこで説明がついてしまうなら、その月の比率は自社の打ち手の成績として読めません。この順番で見るために、外側の2つを先に覚えてください。
同じ名前の数字でも、数えている対象が違います。だから他社と比べられません
比較の話に戻ります。横に並べられない理由を、実際の数字で示します。
Cloudflareが2025年7月1日に公開した記事に、この比率の集計があります。対象は2025年6月19日から26日までの1週間です。この1週間、Anthropicのクローラーは、訪問1回につき約71,000回ページを取りに来ていたと報告されています。同じ1週間、Mistralは読みに来た回数の10倍の訪問を送っていました。同じ集計の中で、ここまで開きます。
まず、この数字は1年以上前のものです。今の数字としては使えません。2026年に入ってからは、同じネットワークのデータを使った別の集計が出ています。そこでは、この比率が2025年のいちばん高かった時期から大きく下がったと報じられています。Cloudflareが出し直した数字ではありません。数字そのものは集計ごとに食い違うので、ここでは下がったという向きだけ書きます。どの数字を採るかで結論が変わるので、数字を置かないほうが正確です。
Cloudflare自身も注意書きを付けています。アプリの中で開かれたリンクは Referer を持ちません。だからこの比率は、実際より大きく出ている可能性がある。ただし、どれだけ大きいかは分からない、という形です。集計した本人が、自分で限界を書いているわけです。
そして、ここが本題です。Cloudflareが測っているのは、自社のネットワーク全体を通る依頼です。Clarityが測っているのは、1つのサイトに来た依頼と、そのサイトで記録された訪問です。数えている対象も、単位も、期間も違います。約71,000という数字と、見本の画面の6,000という数字を並べる。そして「うちはどのあたりか」と考える。これは、目盛りの違う2本の定規を見比べているだけです。
この食い違いは、むしろ使えます。同じ1週間の同じ集計の中に、まったく違う2種類の事業者が同居しています。訪問1回のために数万回も読みに来る事業者と、読みに来た回数より多くの訪問を返す事業者です。これ自体が、この数字に共通の決まりがない証拠になります。社内で他社の比率を持ち出されたときは、数字の大きさを見ないでください。出どころと期間と範囲の3つを聞きます。1つでも違えば、並べた時点で比較になっていません。
だから、他社の比率と自社の比率を比べるのはやめてください。やめるというより、比べ方そのものが決まっていません。これは数字を使う側の作法の話です。
『いやいや、比べられないなら見る意味ないでしょ』→ 比べる相手を先月の自社にします
そう思われたはずです。基準がなく、他社とも比べられない。だったら開く意味がない、と。
半分は正しいです。この比率を「成績」として使う道は閉じています。残っているのは、縦に見る道です。
縦というのは、時間の並びです。先月の自社と今月の自社を比べる。ここなら数えている対象も測り方も同じなので、変化に意味が出ます。横に比べられない数字は、縦でしか読めません。当たり前のことを言っているようですが、実際の報告書はほぼ全部が横の比較で組まれています。目標値、業界平均、他社の事例。どれも横です。
そして、縦に見るときは比率を見ません。2本の線を見ます。読まれた回数の線と、人が来た回数の線です。割らずに並べると、同じ「比率が悪くなった」が2通りに分かれます。読まれる回数が増えて悪くなったのか。人が来る回数が減って悪くなったのか。読まれる回数が増えたほうは、放っておいてよいです。人が来る回数が減ったほうは、中身を見る必要があります。
割り算をすると、この違いが消えます。1つの数字に潰れた瞬間、会議で言えるのは「悪くなりました」だけです。しかも、どちらの線が動いたのかは、あとから戻せません。
もう1つ、事業者ごとの並びも使えます。このカードには、AIの事業者ごとの順位表が用意されています。どの事業者が訪問を返していて、どの事業者が読むばかりなのかが分かります。全部を足した1つの数字では、1社が読みに来た回数のほとんどを占めている状況が隠れます。海外の広告・マーケティングのメディア PPC Land も、同じことを指摘しています。1つのクローラーが読みに来た回数のほぼ全部を占め、別の事業者が訪問のほぼ全部を占めている。こういう場合、サイト全体の比率はほとんど何も教えてくれない、という指摘です。
同じことは動画で先に起きていました。視聴はYouTubeの上で終わります
ここで動画の話をします。読まれる量と戻ってくる訪問が釣り合っていない。これは新しい話ではありません。動画を持っている会社は、同じ形を先に経験しています。
AIが自社の動画を回答の中で紹介したとして、見た人はどこへ行くか。YouTubeです。そこで動画を見て、知りたいことが分かって、終わります。自社サイトのアクセス解析には1行も残りません。問い合わせまで来た人だけが、ようやく数字になります。
同じことは、検索結果に自社の動画が出たときにも起きます。自社の名前を知ってもらうところまでは進んでいるのに、サイト側の数字は何も動かない。クリックが自社サイトへ戻ってこない形そのものは、SEO1位でもクリックされない。AI時代に見るべきは「引用」に書きました。
だから、動画を持っている会社ほど、流入で測る考え方から先に降りる必要があります。資産の置き場所がYouTubeの上にあります。自社サイトの流入で成果を測ると、効いているものが数字に出ません。読まれた回数と流入の差に驚くより前に、差が出るのが当たり前の資産を、すでに持っているわけです。
念のため線を引いておきます。これは僕たちの読み方です。Microsoftやどこかの調査が、この釣り合わなさを動画と同じ形だと言っているわけではありません。似ていると見ているのは僕たちのほうです。
そのうえで、動画を持っていることは、測るうえで有利に働きます。再生回数だけでは成果を説明できない。この経験を、すでに1度通っているからです。AI検索の数字で同じ壁にぶつかったとき、ゼロから考え直す必要がありません。「見られた回数」と「事業に効いた回数」を分けて報告する形が社内にある会社は、この話がすぐ入ります。
では何を会議に出すか。流入の代わりに置く3つ
ここまでの話を、会議に出せる形に落とします。3つです。
①読まれた回数と来た回数を、割らずに2本のまま出す
比率を1つの数字にしないでください。読まれた回数の推移と、AI経由で来た回数の推移を、別の行で並べます。
理由は前の節のとおりです。割ると、変化の向きが消えます。それに加えて、もう1つ良いことがあります。2本のままだと、何も動いていないことも報告できます。比率だと、両方が同じ割合で増えても数字は変わりません。つまり、読まれる量が倍になった月も「変化なし」に見えてしまいます。
記録の取り方も決めておきます。月に1回、同じ日に書き出す。画面の数字は期間の指定で変わるので、期間の取り方を固定してください。そして、書けなかった月は空欄で残します。空欄は、つながりが切れていた期間の記録になります。
②事業者ごとの並びで、返してくる側と読むだけの側を分ける
サイト全体の1つの数字ではなく、事業者ごとの並びを出します。このカードには、その順位表が用意されています。
分けると、打ち手が変わります。訪問を返してくる事業者が並びの中にあるなら、その道は少なくとも通っています。読むばかりで返してこない事業者は、そもそも人を送り返す仕組みを持っていないかもしれません。そちらを基準に決めると、通っている道まで一緒に止めることになります。
会議での言い方も決めておきます。「AI経由の流入は少ないです」と言わない。「訪問を返してくる事業者からは来ていて、返さない事業者からは来ていません」と言う。同じ数字でも、はじめの言い方は止める方向の報告になります。あとの言い方は、続ける範囲を決める報告になります。
③比較の相手を「先月の自社」に固定し、目標値は資料に書かない
比べる相手を、資料の中で先に決めてしまいます。先月の自社です。他社の比率、海外の集計の数字、見本の画面の数字は、どれも載せません。載せると、読んだ人がそれを基準にします。
そして、資料に1行添えてください。「この数字はAIが読みに来た回数で、AIの回答に使われた回数ではありません」。これを書いておかないと、翌月から読まれた回数が成果として扱われ始めます。1行あるかないかで、半年後の数字の意味が変わります。
目標がない報告は、落ち着きが悪く見えます。それでも置かないでください。基準が公表されていない数字に目標を立てると、達成も未達成も自社の行動と関係なくなります。目標の代わりに置くのは、次に確かめることです。つなぐ範囲を広げる。ドメインの組み合わせを直す。返してくる事業者の内訳を1か月分ためる。確かめることは、できなくても次につながります。
確かめきれていないことを5つ書いておきます
今日の話には、確かめきれていないところがあります。隠さずに書きます。
1つ目。この機能がいつ公開されたのか、はっきりしません。報じたメディアのあいだで日付が割れています。だから本文では公開日を書いていません。社内資料に時期を入れたいときは、2026年に追加されたもの、という書き方にとどめてください。
2つ目。カードにどの列が並ぶのかを確認できていません。事業者ごとに比率が並ぶのか、戻ってきた訪問の件数だけが並ぶのかが分かりません。だから本文では「順位表が用意されている」までにとどめています。実際の画面を開ける方は、そこを先に見てください。
3つ目。対応しているCDNの、今の正確な一覧が分かりません。時期によって書かれ方が変わっているので、例を挙げるだけにしました。契約しているCDNが使えるかどうかは、設定の画面で確認してください。
4つ目。6,000 の元になった訪問の件数は、メディアが画面から読み取ったものです。そのメディア自身が注意書きを付けています。だから件数そのものは本文に書いていません。
5つ目。記事全体に掛かる限定です。この記事は、公式の文書に書かれていることと、複数の独立した解説の一致で組み立てています。僕たちが管理画面を開いて確かめたわけではありません。だから画面の文言や細かい表現には、ずれが残っている可能性があります。
例外:この話が当てはまらない会社もあります
1つ目は、自社のサイトを持っていない会社です。AIのクローラーが読みに来る相手がないので、この比率は出ません。見る場所は動画側だけになります。
2つ目は、AIのクローラーを自分から断っている会社です。この場合、読まれた回数が少ないのは設定どおりの結果で、何の問題もありません。ただし、断るつもりがないのに断る設定になっている事故は起こります。確認の考え方はYouTube動画をChatGPTに引用してもらう方法【裏技は存在無し】に書きました。
3つ目は、検索から人を集めていない会社です。紹介と今の取引で足りているなら、優先度は下がります。ただし、社名を調べられたときに何が出るかは、検索を使うかどうかとは別に残ります。
4つ目は、記録をつなぐ設定に手が回らない会社です。サーバーの担当もCDNの契約もない状態で、これを先に片づける必要はありません。その場合は、AIの回答に自社が出たかを見る画面のほうから始めてください。順番を逆にしても、何も失いません。
5つ目は、AI経由の流入が、すでに事業の数字として見えている会社です。問い合わせや申し込みにつながった件数が十分にあるなら、比率より中身を見るほうが早いです。比率は、成果がまだ数字にならない段階で焦らないための道具です。
今日のアクション:見ている画面を確かめて、2本の線を書き出す
やることは3つです。
1つ目。社内で「AI経由の流入がゼロだ」と言っている画面が、何を数えている画面なのかを確かめてください。タグ型のアクセス解析なら、AIのクローラーが来た回数はそこに最初から映りません。映らないものがゼロと出ているだけかもしれません。
2つ目。WordPressで運用しているなら、Clarityの公式プラグインの版を確認してください。見るのは最新版かどうかだけです。WordPress以外なら、質問を1つしてください。「対応しているCDNを使っていますか」を、インフラの担当者か制作会社に聞きます。
3つ目。数字が出たら、比率ではなく2本の線で書き出してください。読まれた回数と、AI経由で来た回数です。今月の分を1行書けば、来月から比較が始まります。
やらなくていいことも書きます。他社の比率を探すのはやめてください。目標を自分で作るのもやめてください。そして、この比率が悪いことを理由にAIO対策を止める。これは、少なくともこの数字だけでは決められません。止めるかどうかを決める材料は、この画面の外にあります。AIの回答に自社が出たかを見る画面、社名やサービス名で検索された回数、問い合わせの入口での反応の3つです。集め方はAI検索の効果測定は何を見る?【動画が引用された先を追いかける】に書きました。
もっと知りたい方へ:AI検索まわりの数字は、見る場所ごとに分けて書いてきました
まとめ:比べる相手を、他社から先月の自社に替えてください
3つにまとめます。
1つ目。「AIにたくさん読まれているのに人が来ない」。この比率に、合格点はありません。Microsoftは、良い比率がいくつなのかを公表していません。独り歩きしている6,000:1は、Microsoftが説明用に出した画面に写っていた例の数字です。平均でも基準でもありません。画面の項目名に average と書かれていても、それは見本のサイトの中での平均です。
2つ目。この比率は、最初の状態では出てきません。アクセス解析のタグだけでは、AIのクローラーが来た回数を数えられません。サーバー側の記録とつなぐ設定が必要です。WordPressなら、最新版の公式プラグインで最初から有効になると説明されています。そして、カードが空っぽなのは、読まれていない証明ではありません。
3つ目。読まれたことは、使われたことではありません。ここはMicrosoft自身が書いています。そのうえで、戻ってきた訪問の側は、Referer が消えるぶん小さく出ます。読まれた回数の側は、人を送り返す仕組みを持たないであろう学習目的の巡回を多く含みます。だから、横に比べないでください。読まれた回数と来た回数を2本のまま、先月の自社と比べます。
AIO対策を止めるかどうかの会議をしているなら、議題を1つ替えてください。「AI経由の流入は何件か」ではありません。「その数字は何を数えていて、何を数えていないのか」です。そこを確かめないまま止めると、通っている道まで一緒に止まります。
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