BLOG
SNSで自社の偽アカが発生した時の対処法【まずは証拠を押さえる】
広報担当者
『うちの会社の名前とロゴを使ったアカウントがInstagramにあるみたいです。お客さんから「これ御社ですか?」と連絡が来ました。通報すればいいのか、社長に報告するのが先なのか、何から手をつければいいか分かりません…』
こういった疑問に答えます。
本記事では、自社の偽アカウント(会社名やロゴを使ったなりすましアカウント)に気づいて、今日なにかを決めないといけない中小企業の広報・マーケティングのご担当者と経営者に向けて書いています。
先に順番を出します。最初の1時間でやることは4つです。
- 証拠を残す。通報でアカウントが消える前に、見せられる形にしておく
- 自社の公式アカウントとサイトで「これは偽物です」と知らせる
- 偽アカがあるSNSに、それぞれの窓口から通報する
- お金や個人情報の被害が出ていたら、警察と相談窓口へ
この記事の要点
- 順番は証拠、お知らせ、通報、相談の4つ
- 通報の結果はSNSが決める。お知らせは自社で今日できる
- 事故の前に、公式アカウントの一覧をサイトに載せる
結論:証拠を残したら、通報より先にお客さんへ「これは偽物です」を出してください
偽アカを見つけた日に、社内で最初に出てくる案はだいたい「すぐ通報しよう」です。間違いではありません。ただ、通報だけで終わらせると、いちばん大事なところが抜けます。
通報したアカウントを消すかどうかを決めるのは、SNSの運営側です。いつ結論が出るかも、自社では決められません。そのあいだも偽アカは動いていて、お客さんにDMを送っているかもしれません。
一方で、自社の公式アカウントとサイトに「これは偽物です」と出すことは、誰の許可もいらず、今日できます。お客さんが騙される前に気づけるのは、こちらです。通報は相手の判断を待つ手、お知らせは自社で打てる手です。だから、待つ手だけで1日を終わらせないでください。
そして順番は、証拠が先です。通報が通ってアカウントが消えると、何が書かれていたかを後から見せられなくなります。警察や弁護士に相談するときに、消える前の画面があれば、何が起きていたかをそのまま見せられます。
偽アカの本当の被害は、お客さんに届く詐欺の連絡です
偽アカ(なりすましアカウント)とは、会社や人の名前・ロゴ・写真を無断で使い、本物のように見せかけたSNSアカウントのことです。偽アカの怖さは、自社の評判が下がることだけではありません。会社の名前を信用して連絡してきたお客さんが、お金や個人情報を取られることです。
警察庁は、SNS型の投資詐欺について、有名人をかたる広告やSNSアカウントから、LINEなどのやり取りに誘導していく手口を注意喚起しています。途中で「アシスタント」を名乗る人物が出てきて、最後は手数料などの名目で支払いを求められる流れです。そのうえで警察庁の注意喚起ページでは、本人の公式アカウントからの発信かどうかを確かめるよう呼びかけています。
注目してほしいのは、警察庁が勧める見分け方が「公式アカウントを確認すること」だという点です。会社でも構造は同じで、お客さんが偽物を見分けられるかは、会社が本物をはっきり示しているかで決まります。
海外ではもう一歩進んでいます。アメリカの連邦取引委員会(FTC)は、政府機関や企業になりすます詐欺を対象にした規則を2024年4月1日に施行しました。この規則で、FTCは連邦裁判所で被害者への返金を求めたり、民事制裁金を請求したりできるようになりました。FTCが公表した数字では、2023年にFTCへ報告された政府・企業なりすまし詐欺の被害額は11億ドルを超え、2020年の3倍以上になっています。
アメリカでは、企業の名前をかたる詐欺に対して専用の規則が作られるほどの被害になっています。名前を知られている会社ほど、なりすます価値があります。
①証拠を残す:通報する前に、消えても見せられる形にします
1つ目は証拠です。ここは通報より先にやってください。慣れていなくても、数分から十数分で終わる作業です。
残すのは5つです
- 偽アカのURLとユーザーネーム。表示名は変えられるので、IDの部分を必ず控える
- プロフィール画面のスクリーンショット。使われているロゴや写真、自己紹介文が写る形で
- 投稿とDMのスクリーンショット。お客さんから転送されたものも含める
- 見つけた日時と、誰からどう知らされたか
- お客さんに実害が出ているかどうか。出ていれば、いつ、何を、いくら
4つ目の「見つけた経緯」は見落とされがちです。「何月何日、お客さんの◯◯様から電話で問い合わせ」のように一行でいいので残してください。あとで相談するとき、いつから動いていたかを説明できるかどうかが変わります。
スクリーンショットは、日時が分かる形で撮ります
スマホで撮る場合は、画面上部の時刻が入った状態で撮ってください。パソコンなら、URLが見える状態で撮ります。どの画面を、いつ見たのかが1枚で分かる形です。
撮ったものは担当者のスマホに置いたままにせず、社内の共有フォルダに日付つきで保存します。担当者が休んだ日に被害の連絡が来ても、誰でも同じ資料を出せる状態です。
もう1つ注意があります。証拠を集めるために偽アカをフォローしたり、DMを送ったりはしないでください。相手に気づかれると、アカウント名を変えられたり、投稿を消されたりするおそれがあります。見るだけにして、記録を取ります。
②自社の公式アカウントとサイトで「これは偽物です」と知らせる
2つ目が、この記事でいちばん伝えたいところです。
お客さんの被害を防ぐのは、偽アカが消えることではありません。お客さんが偽物だと気づくことです。そして、気づかせる手段を持っているのは会社だけです。
偽物を指さすより、本物を指さす
お知らせを出すとき、偽アカのURLやIDをそのまま貼る会社があります。気持ちは分かりますが、おすすめしません。貼ったリンクから偽アカを見に行く人が増え、かえって相手の露出を増やすことになります。
偽物を指さすより、本物を指さす。伝えるべきは「この偽物に注意」より「当社の公式アカウントはこれだけです」のほうです。偽アカは1つ消しても、似た名前で次が作られる可能性があります。偽物のIDを毎回知らせる形だと、いたちごっこになります。本物を示す形なら、次の偽物にもそのまま効きます。
偽アカの特徴を伝えたいときは、IDそのものではなく「当社名に記号や数字を足したアカウント」「当社のロゴを使い、DMで連絡してくるアカウント」のように、見分け方の形で書いてください。
お知らせの文面は、この形で十分です
長い謝罪文はいりません。お客さんが知りたいのは、どれが本物か、何をされたら偽物か、困ったらどこに連絡するか、の3つです。
現在、Instagram上で当社の名前とロゴを使ったアカウントが確認されています。当社とは関係のないアカウントです。
当社の公式アカウントは、当社サイトの「公式アカウント一覧」に掲載しているものだけです。
当社から、DMで個人情報やお支払いをお願いすることはありません。
不審なメッセージを受け取った方は、返信やリンクのクリックをせず、当社のお問い合わせ窓口までご連絡ください。
文面の中の「当社から、DMで個人情報やお支払いをお願いすることはありません」は、実際にそうなっている場合だけ書いてください。もしDMで見積もりのやり取りをしている会社なら、「お支払いのお願いは、必ず当社サイトのお問い合わせ窓口からご連絡します」のように、本物の連絡経路を書きます。ここで嘘をつくと、お知らせそのものが信用されなくなります。
出す場所は、自社サイトのお知らせ欄と、自社の公式アカウントすべてです。お客さんがどのSNSから自社を見に来るかは分かりません。固定表示ができるSNSでは固定して、新しい投稿で流れないようにします。
社内にも、同じ答えを配ってください
見落とされやすいのが社内です。問い合わせは電話にも店舗にも営業担当のメールにも来ます。答えがばらばらだと、お客さんは何を信じていいか分からなくなります。
お知らせを出したら、同じ文面を社内にも共有して、「これ御社ですか?」と聞かれたら「当社ではありません。公式アカウントはサイトの一覧にあるものだけです」と答える、と決めてください。被害の連絡が来たときに誰へ回すかも、ここで決めておきます。
『いやいや、通報すれば消えるでしょ』→ 消すかどうかを決めるのはSNS側です
ここで必ず出てくる反論に答えておきます。通報すれば、すぐ消えるのではないか。
確認できた範囲では、YouTubeはなりすましをポリシーではっきり禁止していて、Instagram、Facebook、LINEにもなりすましを報告する窓口があります。ただ、通報を受けてアカウントを消すかどうか、いつ消すかを判断するのは運営側です。自社にできるのは、正しい窓口から、必要な情報をそろえて通報するところまでです。
日本では、プロバイダ責任制限法を改正・改称した情報流通プラットフォーム対処法が2025年4月1日に施行されました。大規模なプラットフォームに対して、削除の申し出への対応を早くすることと、運用の状況を透明にすることを義務づける法律です。対応が速くなる方向には動いていますが、何日以内に消えるかを自社で見込める仕組みではありませんし、通報したものが必ず消えるわけでもありません。
それに、消えるまでのあいだも偽アカは動きます。通報だけして結果を待つのは、鍵が壊れたと管理会社に連絡したまま、家族に「今夜は戸締まりに気をつけて」と言わないのと同じです。通報と並行して、お客さんへのお知らせを先に出す。この順番を崩さないでください。
③各SNSに通報する:なりすましの窓口はSNSごとに違い、Instagramのフォームは本人か代理人だけです
3つ目が通報です。SNSごとに窓口と条件が違うので、僕たちが確認できた範囲を表にまとめます。公式のヘルプ本文まで確認できなかったものは、表の中にそう書いています。企業がなりすまされた場合に、どんな書類を求められるかは、どのSNSでも確認できていません。そこは各SNSの案内に従ってください。
Instagramのフォームは、本人か正式な代理人しか使えません
Instagramのなりすまし報告フォームは、なりすまされた本人か、その正式な代理人からの報告にだけ対応しています。入力するのは氏名、メールアドレス、本人との関係、偽アカのユーザーネームなどで、身分証の写真と、身分証を持った本人の写真が求められます。1回の送信で報告できるのは1アカウントです。
このフォームは、個人がなりすまされたときの書き方になっています。会社がなりすまされた場合に、誰の身分証が要るのか、登記の書類が要るのかは、フォームの本文には書かれていません。僕たちも確認できていません。ネット上には企業向けの必要書類を言い切っている情報もありますが、根拠を確かめられないので、ここでは書きません。
だから社内では、通報する人を先に決めてください。代表者本人が出すのか、広報担当が代理人として出すのか。身分証を出すことになる人が、その場で決められる立場にいるかどうかで、通報までの時間が変わります。自社のアカウントが個人名義のままだと、誰が「本人」として動くかでも止まります。会社名義への切り替えは会社のYouTubeチャンネルを会社名義にする方法で書きました。
Facebookは、アカウントが無くても報告できます
Facebookのヘルプには、Facebookのアカウントを持っていなくても、なりすましのプロフィールやページを報告できると書かれています。アカウントを持っている場合は、偽のプロフィールやページを開いて、メニューから報告する形です。メニューの名前は画面の更新で変わることがあるので、「報告」と書かれた項目を探してください。
YouTubeは、ブランドのロゴや名前のコピーをはっきり禁止しています
YouTubeのなりすましに関するポリシーでは、人や団体と誤認させるなりすましを禁止しています。対象には、ブランドのロゴや名前を欺く形でコピーすること、紛らわしい綴りを使うこと、名前に「Official」を付けることなどが含まれます。なりすましと判断されると、チャンネルが削除されることがあります。報告は、なりすまし報告フォームから行います。
ファンが作ったチャンネルは、名前やハンドルでファンのチャンネルだと明示することが求められています。ファンだと分からない形で会社の名前とロゴを使っていれば、報告を検討する対象です。ただ、パロディがどこまで許されるかは確認できた範囲を超えるので、ここでは線を引きません。
LINEは「なりすまし」を理由に選べるようになりました
LINEヤフーは2024年6月の発表で、5月28日から1対1のトーク、グループのトーク、LINE公式アカウントの通報理由に「なりすまし」と「詐欺」を加えたと案内しています。翌29日からは、認証されていない公式アカウントを友だちに追加するときに、詐欺への注意を促す表示も出るようになりました。
警察庁が注意喚起している手口も、SNSからLINEへ誘導する流れでした。お客さんから「LINEで連絡が来た」と言われたら、そのトークから通報できることを伝えてください。
通報したら、日時と内容を記録に足します
似たアカウントが別に見つかったら、それも1件ずつ報告します。通報した日時、どのSNSのどの窓口から出したか、受付のメールが来ていればその内容を、①の記録に足してください。④の相談に進むとき、「いつ、何をして、どうなったか」がそのまま説明になります。
④被害が出ていたら、警察と相談窓口へ
お客さんがお金を払ってしまった、個人情報を渡してしまった。こうした実害が出ていたら、通報と並行して相談先に連絡します。
警察には、相談専用の窓口「#9110」があります。警察庁がSNS型の投資詐欺のページで案内している番号です。お客さん本人が被害に遭っている場合は、お客さんに直接相談してもらうよう伝えるのが先です。会社として何を準備すればいいかを聞くときも、①の記録がそのまま使えます。
インターネット上の書き込みへの対応については、総務省の委託事業として違法・有害情報相談センターがあります。相談はWebのフォームから受け付けています。ここは削除そのものをしてくれる窓口ではなく、どう対応すればいいかの助言や情報をくれる窓口です。会社からの相談をどこまで受けているかは、センターの案内で明記されているのを僕たちは見つけられていないので、使う前に案内を確認してください。
偽アカを作った相手を特定したい、損害を請求したい、という段階になったら、そこからは弁護士の領域です。進め方は専門的なので、自社で調べて進めようとせず、早めに相談してください。この記事ではそこから先の手順は書きません。
事故の前にやること:公式アカウントの一覧を自社サイトに載せる
ここまでが、偽アカを見つけた日の話です。最後に、まだ偽アカが出ていない会社にもやってほしいことを書きます。公式アカウントの一覧を、自社サイトに載せておくこと。これが偽物を見分ける基準になります。
警察庁が呼びかけていたのは「本人の公式アカウントからの発信かどうかを確かめる」ことでした。でも、お客さんが確かめに行ったときに、自社サイトにSNSの情報がどこにも無ければ、確かめようがありません。偽アカが出てから一覧を作ると、「それ、いつ作ったページですか」と見られます。何もない平時に置いておくから、基準として信用されます。
一覧に載せるのは、次の4つです。
- 運用しているSNSの名前と、アカウントのIDとURL
- 当社から個人情報や支払いをDMでお願いしない、などの連絡のルール
- 運用していないSNSがあるなら、そのことも書く
- 不審な連絡を受けたときの問い合わせ先
3つ目の「運用していないSNS」は、意外と効きます。「当社はTikTokのアカウントを持っていません」と書いてあれば、TikTokに偽アカが出たときに、お客さん自身が判断できます。
逆向きのつなぎも作ってください。各SNSのプロフィール欄から、自社サイトへのリンクを張っておきます。ただし、プロフィールからサイトへのリンクは偽アカでも張れます。本物かどうかの基準は、あくまでサイト側の一覧です。お客さんには「サイトの一覧に載っているアカウントかどうか」で確かめてもらう形にしてください。YouTubeの場合、概要欄に貼ったURLが押せないことがあります。原因はYouTubeの概要欄のURLが押せない原因にまとめています。
認証バッジは、出せる会社は検討してください
SNSによっては、運営側が本人確認をしたアカウントに認証バッジを付ける仕組みがあります。バッジがあれば、お客さんは一覧を見に行かなくても、その場で見分けやすくなります。
Metaは2026年9月に、有料のサブスクリプション「Meta One」を発表しました。その中のビジネス向けのプランには、認証バッジとなりすましへの保護が含まれていて、発表時点の価格は月14.99ドルからです。ただし認証が通った場合に限られ、プランや価格、提供状況は地域やアカウントによって異なると、Metaの発表に書かれています。日本での価格は僕たちは確認できていません。
バッジは見分けやすくするもので、偽アカが出なくなるものではありません。まず一覧を載せ、そのうえで費用に見合うかを判断してください。
今日のアクション:自社のSNSを1つずつ検索してください
すでに偽アカを見つけた方は、①の証拠から順に進めてください。ここからは、次に備える会社のための手順です。
偽アカがまだ出ていない会社も、今日10分だけ時間を取ってください。
- 自社の会社名と、よく使う略称で、各SNSを検索する
- 自社のロゴや商品写真を使ったアカウントが無いかを見る
- 自社サイトに、公式アカウントの一覧があるかを確かめる
- 無ければ、運用しているSNSのIDとURLを書き出す
誰が証拠を取り、誰がお知らせを出し、誰が通報するかも一緒に決めておくと、当日に迷いません。押す人と順番を先に決める考え方は、YouTubeにアンチからコメントが来た時の対処法【荒れたら押すのは一時停止】でも書きました。
僕たちCVOは、企業のYouTubeやSNSの運用を支援しています。アカウントを増やすときほど、どれが本物かを示す土台を先に作っておいてください。
まとめ:順番は証拠、お知らせ、通報、相談。事故の前に一覧を載せる
偽アカを見つけた日にやることは、4つの順番で決まっています。
- 証拠を残す。URLとID、スクリーンショット、日時、見つけた経緯、被害の有無
- 自社の公式アカウントとサイトで「これは偽物です」と知らせる。偽物ではなく本物を指さす
- 各SNSの窓口から通報する。結果はSNS側が決めるので、通報した日時と窓口を記録に足す
- 被害が出ていたら、#9110や違法・有害情報相談センターへ。相手の特定は弁護士へ
通報の結果は自社では決められません。でも、お客さんに本物を示すことは、今日できます。お客さんを守れるのは、こちらのほうです。
そして、まだ偽アカが出ていない会社は、公式アカウントの一覧を自社サイトに載せるところから始めてください。何も起きていない日に置いた一覧が、いちばん信用される基準になります。
よくある質問
関連記事
お問い合わせ
動画制作・YouTube運用に関するご相談は、以下のフォームからどうぞ。
