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自社サイトをAIの学習に使わせない方法【学習と回答は別に決める】
広報担当者
『うちの記事をAIに勝手に学習されるのは困る、と社内で話が出ました。robots.txtに1行書けばいいと聞いたのですが、AI検索には引用されたいんです…』
こういった疑問に答えます。
本記事では、自社サイトのAI利用の方針を決める立場の広報・Web・マーケティングのご担当者と、制作会社や社内のエンジニアに作業を頼む立場の方に向けて書いています。2026年10月30日にMicrosoftがBingの公式ブログで発表した変更と、同じ日に出てきたGoogle側の方針を合わせて整理します。
先に結論を出します。「AIに使わせる・使わせない」は1つのスイッチではありません。学習に使うか、AIの回答の根拠に使うか、通常の検索結果に出すか。この3つは別の設定です。だから最初にやるのは設定を書くことではなく、3つの用途それぞれに自社の方針を1行で決めることです。
日本語の解説記事は、ほとんどが「AIに学習させない書き方」で止まっています。書き方だけ真似すると、止めたかったものが止まらず、残したかったものが消えます。そこから崩します。
この記事の要点
- 学習・AIの回答・通常の検索は、別々の設定で決まる
- AIの回答に使わせない指定は、サイト全体では書けない
- 同じ1行でも、BingとGoogleで止まる範囲が違う
先に整理:ここは自社サイトの話です
このブログではAI検索まわりの記事を何本か書いているので、今日の守備範囲を先に出します。今回は、自社が配信しているサイトのページをAIにどう使わせるかという設定の話です。YouTubeに置いた動画の扱いは、ここでは決められません。robots.txtもページ側のタグも、自社のドメインに置くものだからです。
| 記事 | 扱っている論点 |
|---|---|
| AI検索に自社が出ない原因 | Googleの「検索の生成AI」のスイッチ。切っても学習は止まらない、までを書いた回 |
| AI検索で自社が引用されない質問の見つけ方 | 許すと決めたあとの話。実際に引用されているかを見る画面 |
| AI検索に引用されるYouTube | 止める話の前に、読める形で置く話がある。動画とテキストの関係 |
| 本記事 | 学習とAIの回答への利用を、どこで別々に決めるか |
Googleの「検索の生成AI」の設定は表の1本目で書いたので、この記事では繰り返しません。あちらはGoogleの生成AI機能に出すかどうかのスイッチ、こちらは学習とAIの回答の根拠に使わせるかどうかの指定です。別物なので、社内の説明では必ず分けてください。
結論:決めるのは3つです
AIとサイトの話になると、「AIに使わせるか、使わせないか」の二択で進みます。ここが最初のつまずきです。実際には用途が分かれていて、設定も別になっています。
①学習に使ってよいか(将来のAIモデルを作る材料にするか)
②AIの回答の根拠に使ってよいか
③通常の検索結果に出してよいか
①を止めても②は止まりません。②を止めても③は残ります。「AIに使わせない」と社内で言うとき、それが①なのか②なのかを決めないまま作業に入ると、止めたかったものが止まらず、残したかったものが消えます。
10月30日のBingの発表は、このうち①と②を、はっきり別の設定として扱うという話です。
10月30日にBingが分けたのは、①と②です
2026年10月30日、MicrosoftはBingの公式ブログで、クロールしたWebコンテンツをAIの学習に使うかと、AIの回答の根拠として使うかを、それぞれ独立に指定できるようにすると発表しました。
Bingはこの2つを AI Training と AI Grounding という名前で呼んでいます。グラウンディングは、AIが回答を作るときに元ネタとしてページを参照することです。日本語の解説では「AI学習の拒否」とひとまとめに書かれがちですが、Bingの中ではこの2つは別の欄で、互いに影響しません。学習は拒否、回答の根拠は許可、という組み合わせが成立します。
もう1つ、見落とされやすい変更があります。学習の指定は、これまでrobots.txtに書くものでした。今回これがページ単位にも広がります。つまり学習はサイト全体とページ1枚ずつの両方で指定でき、グラウンディングはページ1枚ずつだけ、という非対称な形になります。
「AIの回答に使わせない」は、サイト全体では書けません
ここが今回いちばん効く制約です。
グラウンディングの指定に、サイト全体をまとめて指定する置き場所はありません。ページ単位だけです。Microsoftは、サイト全体のrobots.txtにグラウンディングの指定は存在しない、とはっきり書いています。
日本語の解説記事はほぼ全部が「robots.txtにこう書く」という形です。その書き方をそのままやると、止まるのは学習だけです。AIの回答に使われることを止めたいのに、robots.txtだけ直して「対応しました」と報告してしまう。これが今回いちばん起きやすい事故です。
だから作業の前に、方針を2つに割っておく必要があります。学習だけ止めたいのか、AIの回答の根拠にも使わせたくないのか。前者ならサイト全体の1か所で済みます。後者はページ側に手を入れる話になるので、サイトの作り方によって工数がまったく変わります。制作会社に見積もりを頼む前に、ここを決めてください。
実際の書き方は公式ヘルプを見て、制作会社や社内のエンジニアと一緒に入れてください。この記事では書式を載せません。間に合わせで間違った指定を入れると、AI検索での露出を自分で削ることになります。
真ん中の選択肢があります
グラウンディングの指定には3つの値があります。許可、拒否、そして真ん中です。既定値は許可で、何も書かなければ許可として扱われます。
真ん中は、Bingのヘルプでは DisallowExtended と書かれています。MicrosoftのAI製品の中では使ってよいが、Microsoftが第三者に提供するグラウンディングのサービスには出さない、という線引きです。どの製品がどちら側に入るかは解説記事のあいだで食い違いがあるので、社内の資料に製品名を書き写すなら公式ヘルプから取ってください。
法人の判断としては、この真ん中に使いどころがあります。「自社の記事がMicrosoftのAI機能の回答に出るのは構わないが、他社のAIサービスの材料として卸されるのは困る」という線引きができます。二択なら全部止めるしかなかったところに、三択目が用意されたということです。
ここで決めるのは技術の話ではありません。自社のコンテンツを誰のAIにどこまで使わせるかという、広報と法務の話です。だから担当者が勝手に決めず、言葉にして上に出してください。
同じ1行を、BingとGoogleは違う範囲で受け取ります
ここが今回の山場です。日本語の解説でほとんど触れられていません。
まず前提から。学習の拒否は、これまで会社ごとに書き分ける必要がありました。OpenAIのGPTBot、GoogleのGoogle-Extended、AnthropicのClaudeBotと、相手ごとに行を足していく形です。ここに共通の指定が提案されました。robots.txtに「__usage_ai-training」という名前のグループを作り、その下で許可か拒否を書く形です。新しい文法は増えていないので、既存の読み取りの仕組みでそのまま読めます。OpenAI・Google・Microsoft・Anthropicの4社がこれを支持すると表明しました。
注意が1つあります。すべてのロボットに向けた一括指定、つまりワイルドカードの中に混ぜても、学習についての意思表示としては読まれません。元になっている草案では、この名前のグループが無いファイルは「意思表示をしていない」状態として扱うとされています。何も書いていないサイトは、拒否していない扱いです。
そのうえで本題です。同じ1行を書いても、BingとGoogleで止まる範囲は同じとは限りません。
Bingでは、この共通の指定は学習の欄にしか効きません。学習を拒否しても、AIの回答の根拠としては別の欄で決まるので、使われ続けます。
一方Googleは、この共通の指定を Google-Extended の拒否として受け取る方針だと報じられています。そしてGoogle-Extended は、Geminiの学習だけでなく、Gemini Apps で回答の根拠として参照されるかにも関わるとされています。この通りなら、同じ1行で、Bingでは学習だけが止まり、Googleでは回答での参照まで一緒に止まる、という結果になります。
ここは慎重に書きます。Google側のこの扱いは、今の時点では報道と解説が情報源で、Googleの公式文書で確かめられたわけではありません。だから「Googleでは回答まで止まる」と社内に断定して伝えるのは早いです。伝えるべきはこうです。1行で4社まとめて片づく話ではなく、4社それぞれで射程が違う可能性がある。だから書いたあとに、相手ごとに結果を見る必要がある。
なお、Google-Extended は通常の検索結果に出るかどうかには関わりません。これはGoogleのクローラーの一覧に書かれています。学習を拒否したらGoogle検索から消える、という話ではありません。
昔NoArchiveを入れた会社だけ、期限が付いています
2023年9月、MicrosoftはBing Chatでのコンテンツの扱いを制御する方法として NoArchive と NoCache を案内しました。当時この案内を読んで、ページに入れた会社があります。その会社にだけ、今回は期限が付きます。
Bingのヘルプには4つの日付が並んでいます。
| 日付 | 起きるとされていること |
|---|---|
| 2026年12月15日 | 旧タグを使っているサイト向けに、Bing Webmaster Tools で一時的なグラウンディングの設定を登録できるようになる |
| 2027年2月1日 | Bingが、ページをクロールした時点から新しい指定を尊重し始める |
| 2027年3月1日 | 旧タグが、AIの用途の指定としては読まれなくなる。制限を続けたい会社はこの日までに新しい指定を出しておく |
| 2027年9月30日 | 一時的なグラウンディングの設定が失効する。それより前に再クロールで新しい指定が見つかれば、その時点で置き換わる |
読み方の注意を3つ。
1つ目。2027年2月1日は、その日に一斉に切り替わる日ではありません。その日以降、Bingがページをクロールした時点から新しい指定を尊重する、という書き方です。更新の頻度が低いページは、反映が後ろにずれます。
2つ目。3月1日で NoArchive が使えなくなるわけではありません。AIの用途の指定としては読まれなくなる、という話です。通常の検索結果でのキャッシュの扱いがどうなるかは、今回の発表からは読み取れません。3月1日までに新しい指定を出さなかった場合、旧タグのページは再クロールまで許可の扱いに戻るとされています。
3つ目。4つの日付のうち、2027年2月1日はすべての解説で一致しています。残りの3つは解説記事のあいだで書き方にばらつきがあります。期限を社内のスケジュールに入れるなら、公式ヘルプの日付の表を自分の目で見てから入れてください。
自社に関係があるかどうかの判定は簡単です。ページに NoArchive か NoCache が入っているかを見るだけです。入っていなければ、この節は読み飛ばして構いません。
許可しても引用は増えません
もう1つ、方針を決めるときに必要な事実です。
Microsoftは、これらの指定は通常のBing検索の結果に出る資格を変えないと書いています。学習を拒否しても、検索結果から消えるわけではありません。「対応しないと検索から消える」と書いている記事があれば、それは逆です。
同時にMicrosoftは、グラウンディングで拒否か真ん中を選ぶと、AIが作る体験での自社コンテンツの見え方は大きく減る、とも書いています。止めれば減ります。当たり前の話ですが、社内で合意を取る前に言っておく必要があります。「学習は止めたいが露出は減らしたくない」という要望が出たら、止める対象は①だけにする、という整理をしてください。
逆向きは成り立ちません。許可は既定値であって、約束ではありません。許可のままにしておけばAIに引用される、流入が増える、ということではないのです。許可は「拒否していない」だけです。ここを取り違えると、「AI検索対策として許可にしました」という、中身の無い報告が出てきます。
クロールは止まりません
読者がいちばん混同するところを独立させます。
この共通の指定は、学習に使ってよいかの意思表示です。クローラーがページを読みに来ること自体は止まりません。読まれたくないなら、従来どおり相手ごとの拒否を書く必要があります。
「読まれない」と「学習されない」は別です。そして、ここにはもう1つ先があります。すでに読み込まれたデータを後からどう扱うかまで、robots.txtで縛れるわけではありません。Googleの担当者も、robots.txtはクロールの可否を伝えるもので、取り込んだあとの処理まで決めるものではないと説明しています。設定は「これから」に効くものだと考えてください。
ここも社内の説明で誤解が生まれます。「拒否を書いたから、もう学習されていない」ではありません。「これから先、この指定を尊重する会社については、学習に使われない」です。
担当者が今日作るのは、4列の表です
設定を書くより先に、手元に表を1つ作ってください。列は4つです。
①用途(学習 / AIの回答の根拠 / 通常の検索)
②自社の方針(許可 / 真ん中 / 拒否)
③どこに書いたか(サイト全体 / ページ側 / まだ書いていない)
④いつ確認したか
方針そのものは1行で書けます。「学習は拒否。AIの回答の根拠は許可。通常の検索は出す」。これだけ決まっていれば、作業は制作会社に渡せます。決まっていないまま「AI対策をやっておいて」と渡すと、相手はサイト全体に1行入れて終わりにします。それで止まるのは学習だけです。
④の列をなぜ作るのか。2023年の案内を読んでページに旧タグを入れた会社が、3年後の今その記録を持っているか。ここが今回の期限の話でそのまま効いてきます。誰がどこに何を書いたかが残っていないと、期限の話を読んでも自社が対象かどうかの判定から始まります。今回の4列は、次の変更のときに同じ時間を使わないための記録です。
『うちはBingなんて見ていないので関係ないのでは』
こう思った方がいるはずなので、先に答えます。
判断の対象はBingではありません。自社の方針です。今回Bingが先に出しただけで、共通の指定は4社が支持しています。Googleの対応は2027年の初めを目標とされ、OpenAIは今後数か月以内、Anthropicは実装に着手済みと伝えられています。時期はそろっていません。同じ1行を書いても、効き始める日が相手ごとに違います。
だから今やることは、Bingの画面を開くことではありません。3つの用途についての自社の方針を決めて、文章で残すことです。方針が決まっていれば、どの会社が対応を始めても、やることは同じ場所に同じ指定を足すだけになります。
付け加えると、この共通の指定の元になっているのは、IETFに出された個人の草案です。標準として承認されたものではなく、各社の対応は自主的なものです。だから「標準で決まったから従う」ではなく、「主要な4社がそう扱うと言っているから、こちらも方針を決めておく」が正しい受け取り方です。
自社サイトの設定で決められるのは、自社サイトの分だけです
最後に射程の話をします。
robots.txtもページ側のタグも、自社が配信しているドメインに置くものです。YouTubeに置いた動画については、会社側にこれらの指定を書き込む場所がありません。動画の中身をAIにどう扱わせるかを、この設定で決めることはできません。
ここから出てくる結論は1つです。会社の情報をAIにどう扱わせるかを自分で決めたいなら、決められる場所に置いてある情報を増やすほうが先です。動画で話した内容を自社サイトに文字で置いておけば、その分については自社で方針を指定できます。AI検索に引用されるYouTubeの記事で書いたことと同じ筋です。整えるべきは映像ではなく、自社の側に残るテキストのほうです。
この話を急がなくていい会社
全員が今週動く必要はありません。次が全部当てはまる会社は、方針を決めて記録するだけで十分です。
・ページに NoArchive も NoCache も入っていない
・学習について社内から要望が出ていない
・AI検索からの露出は、今は増やしたい側にいる
この場合、既定値は許可なので、何もしなければ今の状態が続きます。期限が付くのは旧タグを入れている会社だけです。ニュースが出るたびに新しい作業を足していくと、担当者の手が止まります。今回は「方針を決めて表に残す」で終わらせていい話です。
逆に、今週動いたほうがいいのは2種類です。ページに旧タグが入っている会社と、学習を拒否していると社外に約束している会社です。後者は、約束した内容と実際の設定が合っているかを見てください。
まとめ:書き方を探す前に、用途を3つに割る
整理します。
2026年10月30日、Bingは学習とAIの回答の根拠を、別々に指定できるようにしました。グラウンディングの指定はページ単位だけで、サイト全体には置き場所がありません。だからrobots.txtを直しても、AIの回答に使われることは決まりません。
共通の指定は4社が支持していますが、受け取る範囲は同じとは限りません。Bingでは学習だけ。Googleはこの1行を Google-Extended の拒否として受け取る方針と報じられていて、そちらはGeminiでの参照にも関わるとされています。1行で4社まとめて片づく話ではありません。
旧 NoArchive と NoCache を入れている会社には期限が付きます。日付は公式ヘルプで自分の目で確かめてください。入れていない会社に、今回の期限はありません。
今日やることを1つだけ挙げます。自社のページに NoArchive か NoCache が入っているかを見てください。入っていなければ、学習・AIの回答の根拠・通常の検索の3つについて、方針を1行ずつ書いて表に残す。それで今日は終わりです。書き方を探すのは、方針が決まったあとでいいです。
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